コラム

お店づくりの大事なプロセスを、プロの視点で覗いてみませんか?
2011.05.03 |コラム

前回はJR HAKATA CITYの見た目や取り巻く商業環境等に触れていきましたが、今回は「中身」についてレポートしたいと思います。

 まずは「博多阪急」から…。売場面積約42,000㎡で展開する関西地区からやってきた百貨店(百貨店の選定では当時色々ともめていましたね)。総投資額約200億円・初年度売上目標を370億円とされています。昔ながらの「百貨店」であれば、昨今の百貨店業績不振(回復基調にあるようですが)の状況や天神地区とのブランドの取り合い等々懸念されるところですが…いかに?
 地下1F:デパ地下ゾーンはというと…平日の昼間というのにすごい人だかりです。他の百貨店でも見覚えのあるテナントも盛況ですが、堂島ロールのモンシュシュやバームクーヘンのクラブハリエ、クリスピー・クリーム・ドーナッツ(アミュプラザ側)は特に長〜い行列(開店直後の「モンシュシュダッシュ・ハリエダッシュ・クリスピーダッシュ」は今は落ち着いたみたいですね)。「初上陸」「スイーツ」の強さを実感する光景です。またフードコートには九州と大阪のご当地メニューが並んでいます。いか焼きやたこ焼きあたりは特に「味」が(関西出身のため)個人的に気になるところです。
 フロアを移動して地上へ。1F、2F…ん?M3F。電車のホーム等の影響か、フロア面積が小さいこと、階高に不規則な部分があるようですね。一般的な商業施設ではこれらの下層階は売上・テナント賃料が稼ぎやすいドル箱ゾーンなのですが、駅の構造上やむを得ないのでしょう。テナントの顔ぶれとしては1Fコンコース側にヴィトンやティファニー、エルメスといったブランドショップが一部見られますが、全体としては比較的カジュアル色・値頃感が強く出ている印象をうけます。少しびっくり!したのは4Fにある、女性誌ELLEとのコラボによるエルカフェ。なんと「世界初出店」というコト。海外主要都市でもなく、東京でもなく、「福岡が初めて♪」という部分がココロをくすぐります。
 また、所々にコトコトステージ(=イベントスペース)と名付けられたスペースが見受けられます。全部で20カ所あるようですが、(全てを確認できませんでした)個人的に気になったのは、地下「うまか研究所」、7F「子育てコミュニティールーム」。うまか〜では食に関するセミナーや料理教室等を(私が見たときは何もしてませんでした。残念…)、子育て〜では交流の場としてだけでなく、専門家による絵本の読み聞かせや父子体操等の教室も行われています(イクメンも要チェック!)。
 阪急百貨店は施設コンセプトを「暮らしの学校」と銘打っています。これらのスペース確保〜教室開催等を行うことにより、情報発信性の強化〜顧客獲得、他の百貨店との差別化が狙いとされています。消費不況が叫ばれて随分経ちますが、商品構成をいじる程度の「モノ」による差別化ではない、百貨店としての新しい切り口の一つかもしれませんね。

 続いて「アミュプラザ」…。こちらは構成として東急ハンズ・各種の専門店・飲食街くうてん・シネコンのTジョイからなっており、約57,000㎡の売場で229のテナント(内84が九州初)、初年度売上を約300億円とされています。さてその中身ですが…
 まずは九州初上陸の東急ハンズ。随分以前から福岡へ出店すると話があり、出店決定か?となっては立ち消え…を繰り返していましたが今回は本当でした。九州の地元名産品がセレクトされている等、他店とは違う展開も見受けられました。ですが個人的な意見としては…規模が少〜し小さい。特に1・2Fが改札等によって満足な面積が確保されていない&5Fまでの展開では、各テーマ毎の商品構成に無理があるように思えます。「フルスケールに近い規模」とされていますが、「九州初上陸」なので個人的には「フルスケール」で来福して頂きたかった、と思います。
 他の専門店はというと、見覚えのある・馴染みのあるテナントの他、九州初出店・初展開の業態店が見えます。テイスト的に天神地区とのバッティングは避けられないかなぁ…とも思われますが。飲食街の「くうてん」はテレビ等でも見かける九州初出店の有名店も多々見られ、メニューの豊富さだけでもなかなか楽しめそうです。一般的に商業施設では「食事」という明確な来店動機がある〜目的性が高いといった点から、飲食店は上層階に配置されることが多く見られます。上層階へ「食事のため」に引き上げられたお客様が、「食事を終え」下へ降りていく際に他の物販店と触れ合う(≒購買機会UP)という理屈〜シャワー効果から、施設としてのメリットが高くなると考えられています。ですが、施設上層階の飲食店そのものの課題として、ランチタイムはともかくディナータイムの集客があります。飲食店は物販店とは違い「稼ぎ時」が1日の中で限られています。その中で高い客単価が期待されるのはやはり夜の集客(その分回転率は下がりますが)。単独店とは違い、営業時間や動線等の制約がある中で、ビル上層階の「飲食街」は比較的テナントの入れ替わり(≒営業不振による退店)が多い傾向にあり、お客様が一巡してからが正念場と言えます。どれだけ固定客をつかめているか?認知されているか?飽きられていないか?…等々。

 商業というものは開店した瞬間からお客様に「飽きられていく」宿命にあります。そのため固定客の獲得・維持のためにも、商品構成の見直し・定期的なイベント・テナントの入替・施設リニューアル等によって「鮮度」を保つ必要があるのです。鮮度の落ちた商業環境では消費意欲も低下します。今後このJR HAKATA CITYがどう変化するのか?今回の開発によって博多駅界隈はどう変化するのか?「福岡市商業環境」は?…今後の変化を思うと、期待と疑問符が入り組みます。

 久しぶりの大規模施設だけあってなかなか書ききれるものではありませんが、JR HAKATA CITYに対する初見でのレポートをさせて頂きました(主観が多々混じっています)。施設規模もそうですが、駅を運営しながらの施工等、開発に携わった方々のエネルギー思うと…担当された方々のご苦労をお察しします。

「お店のフシギ研究所」主任研究員 小林裕幸