コラム

お店づくりの大事なプロセスを、プロの視点で覗いてみませんか?
2011.12.21 |コラム

 年末に入り朝晩の冷え込みがつらくなり出した今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?今年に入って福岡では、JR博多シティに続いてキャナルシティ博多イーストビルが9月30日にオープンしました。他には天神地区にレソラ天神(バーニーズニューヨーク他)、来春には(仮称)大名1丁目プロジェクトといったように注目施設が続々とその姿を現しつつあります。そんな中、「キャナルシティ博多イーストビル」をレポートしたいと思います。

 数年前に「第2キャナルシティ」と計画が持ち上がった時はディズニーの屋内型エンターテイメント施設が進出する!と発表されましたが(楽しみにしてた人も多かったのでは?)、それが世界的な不況もあり白紙撤回。一時期は「いったいどうなるの???」となっていた計画。当初の内容や目論見とは随分違うものになったと思われますが、現プランでは年間来店客200万人、売上約60億円を見込んでいるそうです。その全貌やいかに?


施設環境
 イーストビルの建築コンセプトは「緑と癒しにあふれる歩いて楽しい街」。そんなイーストビルへ住吉神社方面から近づいていくと … ん?。緑化された壁面に施設・テナントロゴより一際目立つ「炭火焼肉・うどん・ウエスト」の看板。そういえばちょうど敷地の角に以前からありましたね。 テナントロゴがランダムに並ぶこの壁面緑化は、面積にして約3,000㎡ほどあり、国内最大規模の壁面緑化だそうです。緑化の樹種に排ガスの吸着分解に優れる常緑植物を採用しており、環境への配慮がうかがえます。
 施設空間としてはセンターのシンボルツリーや全店外向き配置で明るく開放感のある造り(冬場は少し寒そうですが)になっています。 建物自体は地上1〜3階になっており、キャナルシティ博多とは2階でブリッジにより連結し、施設全体の回遊性を確保しています…が、連結場所が1カ所であることや、イーストビル内がH&M等の大型店内で1〜3階エスカレータ等の上下動線はあるものの、3階の平面動線が確保されていないこと等、気になる点はいくつかあります。


テナント構成①
 イーストビルのテナント構成テーマは「今の時代にふさわしい『バリュー&エンターテイメント』の提供」と、なっています。その構成において最も特徴的な点は、九州初上陸となるH&Mを中心とした「ファストファッション」と呼ばれる業態店の構成があげられます。出店を心待ちにしていた方、名前だけはご存じの方も多いのでは?H&Mは、2008年9月に東京銀座へ初出店を果たして以降、関東・関西地区で展開し、今回九州上陸となりました。
 昨年3月にキャナルシティへ期間限定ショップとして出店したH&M。その時は150㎡程の小規模なものでしたが、好評のうちに期間を終えました。今回は正式な店舗としての出店となり、オープン時には数回にわたって入場制限がされるほどの盛況ぶりだったとか。


☆ファストファッションとは?
 メディアで頻繁に取り上げられ、2009年には流行語大賞TOP10に入賞した「ファストファッション」。現在では聞き慣れた感もあり、何となく「あの店かな?」と判断がつく方も多いと思います。言葉自体は安くて早い「ファストフード」になぞらえたもので、最新のトレンドを取り入れつつ、低価格に抑えた商品を世界的に大量生産〜ショートサイクルで販売する業態をいいます。この業態は日本がデフレ不況にあり、節約志向の強まる中、着実に売上を伸ばし非常に高い注目を受けました。
 ファストファッションの代表格として、海外企業ではH&M(スウェーデン)、ZARA(スペイン)、GAP(アメリカ)、フォーエバー21(アメリカ:(仮称)大名1丁目プロジェクトへ出店予定)、日本ではユニクロ・gu、しまむら、といったところでしょうか。
 これら企業の特徴としては、低価格を実施するために製造小売りの販売形態(=SPA)をとっていることや、シーズン毎での売り切りのため追加生産をしない、新しさ・安さをアピールするために売場の更新頻度が高い、といった点があげられます。但し、このように大量に安く早く衣料品を提供することから、消費サイクルが早くなる〜ゴミの増加といった問題も指摘されています。

 さて、メディアの影響もあってか少々過熱気味にも思えるファストファッション。1万円ほどで全身をコーディネートできることから、若者を中心に受け入れられています。イーストビルでの買い物の様子を見ると「全身H&M」といったコーディネートをしている人も多く見られます。ですが、もともとブランド志向の強い日本。今後は新しさや価格といった部分だけで引きつけていくのは難しいように思われます。今のところ「旬の海外企業」ということもあって「企業名=ブランド」と感じられますが、商品が一巡してからは「ファッションアイテムを組み合わせる上での選択肢の一つ」として活用されるのでは?と思われます。但し、一等地とされる家賃水準の高い商業地への出店のみにも関わらず薄利多売の商品構成。大規模店・複数階構成による必要以上?にかかる人件費。収益的に大丈夫なのかな?と個人的に考えてしまいます。


テナント構成②
 と、ここまでファストファッションについて説明しましたが、では改めてイーストビル内のテナント構成を見てみると … イーストビルの規模は店舗面積約12,000㎡・16店舗で、その内ファストファッションと呼ばれるテナントが4店舗「H&M(約2,400㎡)・ZARA(約2,400㎡)・ユニクロ(約2,500㎡)・コレクトポイント(約1,400㎡)」、面積にして実に70%以上を占めている構成になっています。来街者が一休みできるカフェや飲食店については2店舗のみ(新業態のタリーズコーヒーと九州再上陸のピザレストランシェーキーズ)。イーストビル単体で見ると偏り感は否めません。また、キャナルシティ全体での機能分担と見ることもできますが、先に触れた動線の状態も考慮すると、イーストビル内での利便性向上(=業種のバラエティさUP)も必要に思われます。


キャナルシティの展望
 では、イーストビルができてからのキャナルシティのこれからはどうでしょうか?立地的に天神・博多駅両地区のほぼ中間に位置しており、それぞれから徒歩による回遊(=両地区商業施設との比較購買)には若干遠いかな?と、思われます。一般的に「人が特に目的を持たず快適に歩ける距離」として屋内で150m・屋外では300mが限界といわれています(大規模モールでは150m以内にポケットパークや大規模店の配置、動線の交差等、視線を替える工夫がされています)。そのため移動についてはバスや自家用車による自動車移動が中心〜顧客の囲い込みが必要になります。そのため、キャナルシティ単体での集客はもとより、天神・博多駅地区との回遊を考慮すると地下鉄等のインフラ整備や両地区間(=回遊動線上)での商業施設等の新規開発・街路整備といったものが望まれると思われますが … 当然商業施設である以上、施設としての鮮度を保つためにテナントの入替やリニューアル、各種のイベントなどが必要なのは言うまでもありませんが…

 今回、福岡初上陸・デフレ不況の中で注目されている業態ということもあってH&M〜ファストファッションを中心にレポートしてみました。来春にはFOREVER21が関東に次いで福岡へ出店・H&Mの路面店が大名に出店というように、さらなるファストファッション攻勢が続く状況にあります。この業態はどの程度指示されるのか?福岡の商業シーンが今後どうなっていくのか? … 今後も注目されるところです。

「お店のフシギ研究所」主任研究員 小林裕幸